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2004年 11月 04日
ハーバード・ビジネス・レビューという月刊の雑誌がある。世界の論説家が自分の意見を発表する場であり、「顧客ロイヤルティを測る究極の質問 ベイン・アンド・カンパニー名誉ディレクター フレデリック F.ライクヘルド」とか、「メタファーを戦略思考に生かす ボストン コンサルティング グループ ストラテジー・インスティテュート 特別研究員 ティーハ・フォン・ギーツィ」などと、タイトルだけ見ても、なんだかすごそうな記事が並ぶ雑誌なのである。 しかも、ページ数で見れば「日経エンターテインメント」あたりとそう変わらないのに、定価が2,000円もする代物である。 2,000円と言えば、JRで東京から熱海まで行っておつりが100円以上戻ってくるほどの金額であり、すかいらーくであれば、「ふっくら手ごねシチューハンバーグ」に洋食セットをつけて、ビールとデザートを頼んでちょうどそのくらいになる。 必要に迫られて、バックナンバーを購入する機会があり、パラパラと斜め読みを始めて見たのだが、まずは書いてある記事というか論文の内容がすごい。理解しやすいかどうかは別にして、良くこんな文章が書けるモノだと、感心せずにはいられない。さらに言えば、海外の論文を和訳しているわけで、訳している人もすごい。 ...と、よく見てみるとこんな文章が見られる。 「顧客が自分のニーズを判断し、売り手が提供するものを評価することをサポートする。自動車ディーラーは、ハイテクとハイタッチを組み合わせたサービスを提供することで、いまなおこれを実践している‥」 などと、和訳としてはもう一息頑張ってほしいような表現も、多数見受けられる。(じゃぁ、やってみろと言われるとつらいが。。) まぁ、文章も息苦しい雑誌であるのだが、さらに気づいたのは圧倒的に広告の量が少ないことである。 ハイテクとハイタッチな文章が延々と続き、たまに書籍の広告が載っているかと思えば「独走を貫く経営」だとか「知的財産 -基礎と活用」などと来る。某スポーツ紙のように「マドンナ”痔”だった?」というような記事は、間違っても存在しない。 数少ない広告に注目すると、背表紙の広告主は「ブルガリ」である。キンキラの時計の写真にこんなコピーがひとことだけ添えられている。 「ただひとつのものを最上と呼ぶ。ブルガリ」 こういう本を常日頃から好んで読んでいるエグゼクティブには、このテイストがたまらないのであろう。多少つっこませてもらえば、「ただ一つのモノ」とは確かに最上であるが、最低でもある。 さらに、こんな調子の公告の中に、「ドミニックフランスジャポン」という広告主のページがある。この会社が扱うのはどうやら洋服の高級ブランドのようであるが、住所以外には次のような日本語しか印刷されていない。 「竹からできた体に優しい繊維を使用している服地もございます。」 よく見てほしい。「もございます」である。「も」と言うことは、普通に考えると通常のラインもそろえているのだろうが、それが何なのかは一言も書いていない。エグゼクティブは知っていて当然だし、知らないような輩はお断りでございます、と無言の中にも言われているような気がする。 ただ、そんな勘ぐりをしてみてもあんまり悔しいと思わない。なぜなら「竹からできた繊維」に今のところ魅力を感じないからである。なんか硬そうだし、雨が降りしきるうっそうとした竹林などを想像すると、「自分は普通の綿で充分」という気になってくる。 ところで、いったいこのブランドの通常のラインとは何なのだろうか、「竹」が「も」なのだから、「松からできた繊維」だったりするのだろうか? また、一度「竹」の服を着ると、もう綿やウールには戻れない、魔力が潜んでいるのかも知れない。 そのうち、ユニクロあたりが「竹」を始めたら手を出してみよう。
by touch-go
| 2004-11-04 08:42
| コラム
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